planBとフリースペースカンバスで公演した「不断のリズム・・・」について、スタッフの立場から見た所感をまとめてみました(太田)

2つの「不断のリズム・・・」

 「不断のリズム・・」は当初フリースペースカンバスでの1回公演のみを考えて構成されていた。 しかし、結果としてカンバスで上演したものは、劇場空間の特徴から予め考えていたものとはず いぶん異なる構成のダンスになった。そのため、planBで再度構成をあらためて(というか、 当初のテーマに基づいた構成で)、再演する運びとなった。

カンバスにて

 「不断のリズム・・・」は、構成ノートによるところの「常に流れている内なるリズムに耳を 傾け」ることがテーマだと認識していた。とすると、いつもの木村 由の踊りのつくり方から考えられる、“曖昧さ”や“影”、それから“余韻”などの要素を中心 に見せる構成になるであろう。ダンサーの肉体ではなく、その存在と、その周りの空間を見せる、 という木村 由らしい公演になると思っていた。ところがカンバスでリハーサルをしてみると、 これがどうもうまくいかないらしい。
 カンバスでの公演はこれが初めてである。例によって空間の使い方に頭を悩ませ、構成家(と いう呼び方でいいのだろうか?以下仮にK)は舞台の使い方にずいぶん苦労している様子だった。 試行錯誤の末、結局、客席を斜めに配置した、“気持ち悪い(と私は思う)”舞台構成に落ち着いた。
 カンバスは地下駐車場を改装して作り上げたアトリエだ。そのため天井が非常に低い。Kは「広 がりを出したい」と繰り返して言っていたが、客席の配置とカンバスの真っ黒でマットな壁のお かげで、横方向の広がりはできたようだ(実際観客からそういった感想もあった)。ほとんどの観 客は壁に対して不安定な向きに座らされる。うしろに寄りかかったりできない、落ち着かない状態 と言えるか。カンバスでは初めての客席の使い方だそうだ(カンバスのスタッフの方、いろいろ無 理を言ってすみませんでした…)。
 なんとか舞台空間は決まったが、実際立ってみると異様にダンサーが大きく見える。踊っている ダンサーが大きく見えるというのは、存在感があるという意味から“誉め言葉”だそうだが、いや、 これでは実に大きく見えすぎる。「空間にポツリと存在することを願ってやまない」Kにしてみれば、 これは意図するところではない。
 そんなこともあってか、空間全体を見せようとしていたはずの「不断のリズム・・・」だが、カ ンバスでは直前になって構成がまったく変わった。「打合せにないことやるかも」と、いつものセ リフに「はい、よろしく、舞台が始まったらダンサーのものですから」と答え、照明の坂中さんの 緊張した様子は見て見ぬふりをし、舞台は始まり、そして終わった。

 観る側の反応や感想はどうあれ、当初の構想より、ダンサーが「よく動く」パフォーマンスだっ たと思う。空間を見せるというより、ダンサーの動きの面白さを感じた。今までの木村になかった 動きも見られた。
 公演後の観客からの反応は、ストーリー性を感じてくれたと思えるものが今までと比べて格段に 多かった。人それぞれ自分の考えたテーマで物語を熱く語ってくれた。これについてはKも興味深 く耳を傾けていたようだ。 ▲ページ先頭へ

planBではどうだったか

 フリースペースカンバスにおいては当初の構想とはまったく違う舞台となった「不断のリズム・・・」 だが、planBでの再演はどうだったか?結果は、「やりたかったことができたが、まったくウ ケなかった」というのが正直な印象だ。
 “空間を見せる”“ポツリ…と存在する”ことをキーワードに作った(と私は思う)「不断のリズ ム・・・」だが、カンバスでは劇場空間の特徴から、空間よりもダンサーを見せる演出になってし また。うってかわってplanBではダンサーが“見えない“。照明の当て方からして舞台に置い た木や壁、またむしろその間の空間を生かすように向けられ、ダンサーは暗がりの部分にいること が多く、絵的には「ほんやり」としている印象だ。
 ダンサーの動きもゆっくりとしていて、展開があるかと思うと、またもとの動きに戻っていく。 ゆっくりしたダンサーが「次は何をするのか」と期待して一生懸命みていると、非常に疲れる演出 だと思う。前回でストーリーを想像し、意識するしないに関わらず展開を期待して見た観客に、 「煮え切らない踊りだ」と思った人がいるのも、もっともである。
 「この空間に何か感じてもらえれば・・・」という木村の意図が通じなかった観客(大半がそう であったようだが)には、カンバスでの公演よりコントラストが低く、すっきりしない舞台だと思 えただろう。
 しかし、今回目指したのはカンバスでのダンスのような舞台ではなく、そこにある物、というよ り場所、空間を、ぼーっと眺めていて感ずるものを…、というところが狙いである。幸か不幸かカ ンバスでの公演のイメージがあったせいで、planBバージョンの意図が通じにくくなったか、 それともその意図を通じさせる力が足りないのか?
 その答えを求めてか、次回作の「包含」ではさらに動きがゆっくりになり、リーフレットにも “展示物”という言葉が出てきた。 ▲ページ先頭へ

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