目の前に踊っているのが由さんではなく、由さんの肉体を借りた、何か別なものが動
いている感じが、いつにもましてしました。そう。それは植物の動きに良く似ていま
したが、同時に動物でもあるようで、不思議なものでした。
植物と感じたのは、手を大きく広げ、何かに向かって懸命に伸びて行きながら、ゆ
らゆらとうごめき、螺旋状に上に伸びて行くような動きが主体だったからです。・・
・何を求めているか。それは太陽ではないでしょうか。・・・植物は芽をふいて後、
つねに太陽に向かって伸びて行きます。でも太陽は一日の中で、時々刻々位置を変え
ますので、植物の体は少しずつ回転します。そしてこの動きは花をつけるころになる
とさらに顕著になり、開いた花は太陽を一身に浴びようと、大きく開いてその後を追
います。
由さんが遠くの1点を見つめて、何かを必死に求めるような表情で、ゆったりと体
を回転させていく動きは、太陽を求める花の動きそのものです。
最初の映像が象徴的でした。コンクリートジャングルとも言うべき都会の騒音とビ
ルの風景の中、一瞬フラッシュのように浮かび上がった白い花。・・・この印象が踊
りの最後まで頭から離れませんでした。▲ページ先頭へ
  
コンクリートジャングル、コンクリート砂漠。いや、都市のイメージはツンドラで
すね。冷たいコンクリートと金属とアスファルトに覆われた都会。そこは大きなビル
により一日中太陽の光を奪われ、乾燥と低温とに悩まされる所。・・風に流されて都
会の土に飛来した植物の種も、発芽したとしても、水も太陽もほんの僅かに与えられ
るだけ。・・・ああ、生まれてこなければ良かった。何のために生きているの?。た
だ死ぬために生きているの?。・・・こんな呟きが聞こえてきそうな舞台でした。
この重い苦しい雰囲気はさらに、終始流れる耳障りな音により増幅されました。・
・・あの音。最初はどこかで聞いたことのある音と思いましたが、何だか分かりませ
んでした。・・・・でも突然ひらめきました。・・コンビニの前に夜になると点灯す
る虫除けの電気。バチバチと火花を出しながら、放電し、光りによってくる虫たちを
たちどころに焼き殺すあれ。・・・自然である事を拒否し、自然を破壊しつづける都
会の象徴のような音。・・でも繰り返し聞いているうちに一定のリズムに引きこま
れ、耳障りな音が次第に何も感じなくなり、そのうちに揺りかごの上で回るおもちゃ
の音のように当たり前になってしまう音。
どこか重苦しいけれど、悲しくも美しい舞台だったと思います。
都会のツンドラの中でうごめいているのは花たちだけではなく、人間もまた同じだな
との思いを強く感じながら、踊りに引きこまれていました。・・・きっとこの思い
は、「彼女はただ静かに寝ていたかった。だけ・・・」という言葉にも触発されてい
るのでしょう。▲ページ先頭へ
  
今年の公演「花の中」は、とても象徴的な踊りの連続のように思います。言葉と音
と映像と踊り。それぞれが相互に影響し合いながらなんらかのイメージを醸成する。
この4つの要素が、見るものの中のさまざまな思いに働きかけ、見るものの前に1つ
の幻想を作り出していると言えましょうか。
「由さんの肉体を借りた何者かが踊っている」と表現しましたが、それが幻(=イ
メージ)の現実化ということなのではないでしょうか。今回の踊りでその感を強くさ
せられたのは、遠くの1点を思いつめたように見つめるという眼の動きです。きっと
由さんの脳裏にはあるイメージがあり、それを追い求めそれと一体化しようとする営
みがあったのかと思いますが、この動きは何か交霊者の動きを思わせます。・・・・
・うーん。踊るってこと自体が、もともと霊の世界との交わりそのものだったかな。
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(コアラさん)

肢体の美しさ、しなやかさが素晴らしいです。鍛えられてるな・・・と単純に思っち
ゃいました。心がいやされました。
音も神秘的で、自分まで透明になったような、そんな気持ちになりました。
(みゆさん)
見ながらにして踊り、眠り、空間になれた気がした。
身体の感覚(間隔)も僕とあまり離れていないし。
(Lさん)
仙人のようだった。体の形をかえているだけなのに、いつの間にか位置がかわって
いた。アメーバってこんな感じで動くのかなと思った。由ダンスだった、僕にとって。
終始ゆっくりだったのも新鮮。木に触れても少しも動かさなかったのはすごい。まっ
たく飽きなかった!!
(ゆ〜すけさん)
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